カップルコミュニケーション 伝えるvs共有する
突然ですがコミュニケーションとは何でしょうか?
カウンセリングには個人のクライアントさんの他にカップルの方もたくさんお見えになりますが、圧倒的に多い悩みが”コミュニケーション問題”です。
アメリカだと国際結婚をされているカップルの方もたくさんいらっしゃいますので
文化や言葉の違いでコミュニケーションが上手くいかないと言われる方もたくさんいると思います。
ただこれは日本語を話すカップルの方も同様で、同じ言語を話し日本文化を共有していても
やはりコミュニケーションが上手くいかないという方もいます。
以前、日本人は相手に気持ちを察して欲しいと願い、欧米人はそんな日本人にはっきりと言って欲しいと希望する傾向があるというお話をしました。ただ国際結婚のカップルはそういった違いがあるからと結論づけやすいかもしれないですが、日本人同士の場合だったらどう説明できるでしょうか?
ではここで少し”コミュニケーション”という言葉を考えてみます。コミュニケーションの語源はラテン語の”"コムニカチオ(communication)”です。この意味は”共有すること、分かち合うこと”です。コミュニケーション=伝えることと思われている方が多いと思いますが、コミュニケーションとは本来自分の思考・感情と相手の思考・感情を共有することなのです。
そう考えるとコミュニケーションが上手くいかないということは、思考と感情の共有が上手くいかないということなのです。そして先ほど述べた文化や言語とは共有が上手くできない一要素にはなるのですが、それよりも本人の思考と感情の共有への向きあい方のほうが重要になってくるのではないかと思います。
例えばこんなケースはどうでしょうか。結婚されてから数年が経ち、お子さんもいらっしゃるご夫婦がいるとします。日々お仕事と子育てに追われ、体力・気力とも限界に達しています。奥さんは旦那さんにもっと子育てを手伝ってもらいたいと思いますが、何度もお願いするのも疲れ果て、いつも見てるんだから言わなくてもわかるでしょ、察して手伝ってよと思います。
さてこの時”伝える”コミュニケーション方法をとった場合、旦那さんに猛烈に文句を言うか、または伝えるということさえも諦めてしまうという選択があると思います。では本来の共有するというコミュニケーションだったらどうでしょうか?
共有するコミュニケーションの大きな違いは会話は一方通行ではないということです。自分の思考・感情を相手に共有するだけではなく、相手の思考・感情も共有する必要があります。
そう考えると先ほどのケースの旦那さんにも主張があるでしょう。仕事で疲れてしまっている、子育てを自分なりに手伝っていると思う、どんな手伝いが必要なかよくわからない、手伝ってしまったら失敗が多く怒られてしまいやる気がなくなってしまったなど。
そしてこれに加え個性もでてきます。自分は褒められるともっと頑張れる、やることが決まっているとできる、仕事がない日(週末)ならプレッシャーを感じずにできる。もちろん共有と言っていますから旦那さん側から奥さんの思考・感情の共有への意欲と個性の理解も重要です。
カップルでカウンセリングにいらっしゃる方は、自分のやり方への強烈なこだわりとパートナーとの思考と感情の共有への前向きな態度が希薄なことがよくあります。”付き合いだしの頃は上手くいっていたんです”というのはこの共有への意欲が失われているのも一因だと思います。共有への意識が薄らいでいるということは、各カップルが築いていくそのカップル固有の文化やスタイルを構築していく作業がとまってしまうということです。
よくある理由としてはもう相手のことは知っているという認識があるからだと思います。相手も私のことをわかっているはずという認識もあります。でも結婚をして年月が経ち、年齢と経験を重ね、子供もでき、生活環境もリズムも変わっているのに相手も自分も昔と変わらず同じであると言い切れるでしょうか?
人間である以上全く変わらないということはありません。動物は環境に適応できるように多少の程度の差はあれ日々変化しています。そして人の心理になると本当にたったひとつの些細な出来事でも大きく変わってしまったりします。ですから自分のことも相手のことも常に変わるものとして、”今ここ”での思考と感情を共有し、日々変わりゆくお互いの関係を微調整しながら良好な関係を維持することが、カップルとして成熟されていく道だと思います。
どうぞ皆さん毎日温かく笑顔の多いカップルリレーションシップを築いていってください。